2021年10月20日
生産緑地の2022年問題とは、一般的に生産緑地の所有者が市町村に対して買取り申し出をした場合、市町村は生産緑地法第11条により買い取らなければならないとされておりますが、現状としては自治体の財政状況が厳しいため、ほとんど買い取られておりません。したがって、大量の土地が市場に放出されるため安い値段でしか土地が売れないのでは?と懸念されているのが生産緑地の2022年問題。
そもそも、買取り申し出をする生産緑地の所有者は、本格的に農作物を生産し出荷している方ではなく、売ることを前提に業者と交渉しておりますから、納税猶予や固定資産税の優遇がなくなることの障害は余りないのかもしれません。
成田市や富里市などをみる限り、来年から土地が突然下落するとは考えがたく、生産緑地エリアの住宅供給不足は依然として続いており、業者が群がっているのが現状です。焦る必要はなく、むしろ業者が売らせるための口実で使っている可能性もあるためご注意頂いた方がよろしいかと思います。
さて、売ることを前提とした買取り申し出以外に、農業をされている方は特定生産緑地の指定を受けることで農業を継続することが出来ますが、現在潜在的問題となっているのは、会社勤めをしているため本格的に農作物を生産し出荷することが難しいものの、税制優遇の観点から農地として維持する程度に耕作されている方になります。生産緑地は農地としての活用以外に災害避難場所であったり緑の保全の観点からも見直されており、周辺が宅地化され自然が減少していくことを憂慮されている方の気持ちを汲むことも大切なことと考えます。
生産緑地は他人に貸せないという問題があり、また、農地も農地法の関係から有償の場合、賃貸借をやめるのが困難なケースがあり、農業経営をしていない地主にとって農地が足枷となっているのが現状です。
そこで生産緑地に関しては、賃貸が出来るように都市農地貸借法(都市農地の貸借の円滑化に関する法律)が制定されました。これは、一般農地と異なり、契約更新時には必ず契約を終了させ土地を返還してもらうことが出来る制度で、とても画期的なものです。相続税の納税猶予と固定資産税は農地課税も継続されます。
弊所においても、地主の方から生産緑地は売りたくないが、維持が大変という話を聞いておりました。生産緑地を有償で貸しても契約更新時に戻って来ることを知らない方が結構おり、今回の成田市への申請に際しても市役所の方は誰も知らず手間取りましたが、成田市で都市農地貸借法の活用として第一号となりました。農業委員会の方も初めてのケースということでかなり慎重でしたが、今後はスムーズに進んでいくものと思われます。
関与先にはいくつか農業法人がありますが、農業従事を希望する若い方がかなりいることにビックリしております。また、富里市に関しては農業の事業承継がスムーズに進む傾向にあります。
弊所では農地を借りたり購入して営農している農業法人がございますので、生産緑地を貸したい方や一般農地の売却を検討されている方は、ご連絡頂ければ対応させて頂きます。
2021年06月22日
以下は、外国人技能実習生を受け入れている協同組合の組合員向けに用意した税務に関する研修会のレジュメになります(千葉県中小企業団体中央会)。内容は自由で構わないということでしたので、思いつくままにまとめました。目次レベルまでの公開となりますが、ご参考までに。
第1回目 消費税…組合員(実習実施者)、協同組合の税務
1 課税・非課税・免税・不課税(課税対象外)取引の判定
(1)概要
(2)不課税取引(課税対象外)
① 技能実習生の母国での講習費など
② 公海上で漁獲した水産物
③ 個人がネットオークション等で販売した場合
(3)免税取引
① 金塊密輸に係る消費税還付の仕組み
② 輸出免税、国外輸送(自社・外注)
③ 輸入商品、輸入貨物の国内配送(自社・外注)
2 軽減税率制度
(1)食品表示法・酒税法との関係
(2)各種取扱い
① 生きた鶏や豚、牛の販売(軽減税率の適用対象となるケース、ならないケース)
② 家畜の飼料やペットフードの販売
③ 苗木や種子
④ 梨やブドウ、イチゴ狩りなど観光農園
(3)簡易課税制度における農林水産業の第2種・第3種区分
3 インボイス制度(適格請求書等保存方式)と小規模事業者の問題点
(1)概要(施行日は令和5年10月1日)
(2)適格請求書発行事業者登録申請開始(令和3年10月1日~)
(3)現在と変わること
(4)小規模事業者の問題点
第2回目 法人税、所得税、住民税…組合員(実習実施者)、技能実習生の税務
1 事業形態別(個人と会社)のメリット・デメリット
(1)メリット
① 経営面
② 税制面
(2)デメリット
① 経営面
② 税制面
(3)法人形態
① 農業法人
② 株式会社(株式譲渡制限会社)
③ 合同会社
2 技能実習生に係る税務上の注意点
(1)年末調整
① 技能実習生の扶養控除
② 年の中途で帰国する場合
(2)所得税確定申告
① 出国までに年末調整が間に合わない場合
② 帰国後の厚生年金(国民年金)脱退一時金の取り扱い
(3)住民税
① 組合員(徴収義務者)
② 年の中途(令和3年5月まで)に出国する場合
③ 年の中途(令和3年6月以降)に出国する場合
④ 帰国した技能実習生の住民税を負担した場合(年末調整は完了)
3 その他
(1)肉用牛売却所得の課税の特例(肉用牛免税特例)
第3回目 その他税務…組合員(実習実施者)、技能実習生の税金
1 事業承継(法人税、所得税、相続税、贈与税、消費税)
(1)会社の場合…自社株式の移転問題
① 財産債務の承継
② 経営権の承継
③ 贈与
④ 譲渡
⑤ 相続
⑥ 事業承継税制
⑦ 自己株式の取得
(2)個人事業の場合
① 所得税
② 相続税
③ 贈与税
④ 事業承継税制
⑤ 消費税
2 農地に係る税務
(1)相続税・贈与税の納税猶予
(2)生産緑地の2022年問題
(3)都市農地賃借法の活用
3 関税
(1)日米貿易協定に基づく牛肉セーフガード
(2)豚肉の差額関税制度
4 租税条約
(1)概要
(2)中国とベトナム
2021年03月13日
YouTubeからの収益に対する税の取り扱い変更についてのメールが、3月10日付でありました。
YouTubeヘルプによりますと、今年後半(早ければ 2021年6月)以降は、Youtube等の収益から米国の税金が差し引かれる可能性があるため、源泉徴収の必要性や金額をGoogleが正確に判断できるよう、2021 年5月31日までにAdSenseでの提出依頼をしたようです。
5月31日までに税務情報を提出しなかった場合、米国税法によりYouTubeを通して全世界で上げた総収益から最大24%を控除される場合があるとしています。
変更理由として、米国外に居住するYoutuber等を対象に、YouTubeからの収益が米国税法の観点からロイヤリティとみなされるよう利用規約が変更され、この変更によりYoutuber等の収益に対する課税方法が変わるためとしています。
そのため、Googleは内国歳入法第3章に基づき、米国外に居住するYoutuber等から税務情報を収集し、「米国在住の視聴者から収益を上げている場合」には、その収益に対し源泉徴収義務が生じます。
メール内容がわからずそのままにされている方もいらっしゃるかと思いますが、YouTube等の収益のある方はAdSenseに従い税務情報を5月31日までに提出する必要があります。
YouTubeヘルプにあるとおり、米国在住の視聴者から収益を上げている場合には、その収益に関しては米国に課税権が及びますのでGoogleが源泉徴収することは何ら問題ございませんが、日米間では租税条約が締結されておりますので、AdSenseに従い税務情報を5月31日までに提出すれば、軽減税率0%が適用され源泉徴収されず従来通り全額入金されます。
また、年末までに税務情報を提出した場合、状況によっては、源泉徴収税額の全部又は一部を返金し、源泉徴収税率を24%より低く調整できる可能性があるとのことです。
万が一提出できずに源泉徴収されたとしても、確定申告の際、外国税額控除の適用により米国で源泉徴収された税金が精算される仕組みや経費として計上する方法があります。ただし、源泉徴収された税額が日本の法人税・所得税からすべて控除されるとは限りませんので、期限内に税務情報を提出されることをお勧めいたします。
2020年06月13日
新型コロナウィルス給付金関連の課税、非課税、不課税判定について
基本的には従前通りの制度趣旨に従った取り扱いとなっており、新型コロナウィルスに関連しているからといって、特段、非課税扱いとなっているものはございません。
〇 特別定額給付金(10万円/人)…所得税は非課税
〇 子育て世帯への臨時特別給付金…所得税は非課税
〇 雇用調整助成金
法人又は個人事業主(全業種)への入金額…法人税、所得税は課税、消費税は不課税。
支給した給与…法人税は損金、所得税は経費、消費税は不課税。
従業員が受け取った給与…所得税は課税。
〇 持続化給付金
法人又は個人事業主(事業所得のみ)への入金額…法人税、所得税は課税、消費税は不課税。
〇 千葉県中小企業再建支援金
法人又は個人事業主(農業医療等除く)への入金額…法人税、所得税は課税、消費税は不課税。
〇 各市町村独自の給付金
法人又は個人事業主…法人税、所得税は課税、消費税は不課税。